会長挨拶

日本不育症学会設立のご挨拶

 

2019年3月30日にJPタワー名古屋において第1回日本不育症学会を開催いたします。名古屋市立大学では故八神喜昭教授のもとで1980年頃から習慣流産の研究を行ってきました。記念すべき第1回学術集会を名古屋で開催させていただき、こんなにうれしいことはありません。秀逸な一般演題をご応募いただきました。

特別講演にはEuropean Society of Human Reproduction and Embryology (ESHRE, 欧州生殖医学会)Recurrent Pregnancy Loss (RPL)ガイドライン作成のとりまとめを行ったMariëtte Goddijn教授をお招きして、Key messages of the ESHRE Guideline on Recurrent Pregnancy Lossという講演をしていただく予定です。通訳も準備いたしましたので英語が苦手な方にもお聞きいただけます。世界標準の不育症を学んでいただくことができます。

 

不育症研究については、日本生殖医学会、日本生殖免疫学会などで成果発表されてきましたが、不育症の4大原因は抗リン脂質抗体、夫婦染色体構造異常、子宮奇形、胎児染色体数的異常であり、免疫のみならず、遺伝、内分泌、凝固線溶系、手術手技と多岐にわたる知識、技術を要する疾患です。妊娠経験者の5%と、高頻度の患者が存在しながら専門学会が存在しないままでした。日本不育症学会を医師のみならず、看護師、心理士、遺伝カウンセラー、胚培養士のみなさんにも学んでいただける場にしたいと思います。

 

不育症とは、流産、死産を繰り返して児が得られない病態と定義されています(日本産科婦人科学会用語集2018)。欧州生殖医学会 (ESHRE)と米国生殖医学会American Society of Reproductive Medicine (ASRM)では、RPLtwo or more pregnancy lossと定義されています。習慣流産Recurrent Miscarriageは、1990年のLancet3回以上連続する流産と定義されて以来定着しています。しかし、日本では、不育症の定義でさえ、間違った情報が流れ、混乱しています。さらに、原因不明の場合でも平均的な年齢であれば薬剤投与をしなくても一定の確立で出産できますが、研究的な治療が、説明・同意のないまま自費診療として実施されています。臨床研究法が制定され、このような適応外治療は適切な倫理委員会の承認を経て実施されることが義務づけられました。

 

日本不育症学会を通じて、標準的不育症とは何かを学んでいただき、研究を推進し、患者さんに貢献できることを目指したいと思います。

 

名古屋市立大学大学院医学研究科 産科婦人科教授

不育症研究センター長

 

杉浦真弓